『雨』 サマセット・モーム著

 モームの短編は、俗っぽいが、人間の心理、しかも誰もが持つ嫌な部分を暴き出すようなものが多く、実は結構好きだ。こういう類の小説が好きだというと、趣味が悪い、と言われるのかもしれないが、そうした悪趣味なところにこそ、人間らしい部分があったりするのかもしれず、モームはそのあたりの感性がたいへん鋭かったのだろうと思う。きっと、モームという人物は、人の言動の裏側ばかりよむ、ちょっと嫌な奴だったに違いない、などと勝手な想像するのも、趣味が悪くて、また一興である!

 モームの短編は、どれも最後のオチ、どんでん返しで「うまい!」とか「そうきたか!」と思わせられるのだが、とりわけ「雨」は、ストーリー展開、降り続く雨が人の精神を微妙に崩壊させていくという伏線、そして最後のオチと、どれをとっても秀逸。

 短編なので、気軽に読めて、モームをはじめ外国文学に馴染みのない人にもおすすめです。